2021年6月のテーマ 食育月間~お米を食べよう~

1、6月のテーマは「食育月間~お米を食べよう~」です。

2、食育とは
2005年に制定された「食育基本法」前文には、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること」と書かれています。ポイントは「実践できる」ように教育するというところ!コープ自然派が日々行っている事業&活動も、まさにこのような目的をもって行っています。

3、食に関する適切な判断力を養うこと
食は身近でありながら、ひとつの学問分野として独立できるほど多様な側面があります。その中でも、その素材がどのように作られているのか(食材)、どのように食べられているのか(食文化)、心身にどのように影響しているのか(栄養)は多くの人にとって関心の高い観点ではないでしょうか。あふれる情報に振り回されず、自分の体質やライフスタイルにとってより良い判断ができるように、食育を通して視野を広げていきたいですね。

4、日本の食文化
2013年、和食はユネスコ無形文化遺産に登録されました。南北に長く、四季が明確な日本には多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまたこれに寄り添うように育まれてきました。このような「自然の尊重」というキーワードに基づき、和食の特徴は (1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重(2)健康的な食生活を支える栄養バランス(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現(4)正月などの年中行事との密接な関わり とまとめられました。私たちが守り引き継がなければ消えてしまう「遺産」。改めて和食を見直してみませんか。

5、地域の特性を生かした食生活
「身土不二(しんどふじ)」という言葉があります。人のいのちと健康は食べもので支えられ、食べものは土が育てる。ゆえに人のいのちと健康はその土と共にある、という考え方です。地元の旬のたべものを食べることで季節を感じ、伝統食を食べることで歴史を感じる。人が自然の一部として生きていることを知る第一歩ではないでしょうか。

6、環境と調和のとれた食料の生産とその消費
自然界は生産、消費、分解のサイクルで成り立っています。分解が追いつかないほどのスピードで生産したり、分解できないものを作り出したりすることは、環境と調和しているとはいえません。分解を担当してくれる菌や細菌を排除することも。コープ自然派は、化学肥料や農薬に頼らず、微生物の働きを土づくりに活かした有機農業(オーガニック)を推進し、遺伝子組み換えやゲノム編集や放射性物質に汚染されていない食料を守っていきたいと日々取り組んでいます。

7、食料自給率の向上
2019年度の日本の食料自給率は38%でした。国は2030年度までに45%に高める目標を掲げていますが、わたしたちのいのちと健康の維持に必要な食料の安定供給にはまだまだ足りません。遠く海のむこうから運ばれてくる食べ物のほうが、日本国内で作られたものより安いのはどうしてでしょう。農業では生きていけないといわれるほど、農家の収入が低いのはどうしてでしょう。わたしたちが、国産オーガニックが買えないほど貧しいのはどうしてでしょう。立ち止まって考えてみる必要があるのではないでしょうか。

8、食料の生産者と消費者との交流
コープ自然派では、産直をとても大切にしています。自分たちが食べている食べ物を誰がどんなふうに作っているのか知ることは、いちばん大切な食育だと考えます。だからこそ、学校給食でも地産地消の給食を実現したいと取り組んでいます。そして、少しでもいいから自分でも作ってみること。消費者から生産者に一歩近づくだけで、見えるものがたくさんあります。

9、農山漁村の活性化
たとえば私たちは、くらしの中で歌をうたい、ギターを弾きます。その中から特別に勉強した人や技術のある人がプロになっていくわけです。同じように、くらしの中で野菜を育て、山菜を採る人がたくさんいる、その中から農家になっていく人がいるというのが理想でしょう。アマチュアの裾野を広げること、プロの頂を高めること、その両方がうまくまわるところに農山漁村の活性化があると考えます。食育のゴールにはこのような大きな目標も定められています。

10、食品の安全性
食品の安全性を知りたいとき、表示で分かる場合と、分からない場合があります。加工品には商品のパッケージに一括表示の欄があって、原材料や添加物が分かるようになっています。ここを見れば、不要な添加物が入っていない商品を選ぶことができます。でも、お米や野菜に使っている農薬が化学肥料、お肉や魚に使っている薬、また遺伝子組み換えされたものかどうかは表示されないので分かりません。だからこそ、生産者とコミュニケーションがとれる関係を築き、信頼できる生産者がつくったものを選びたいですね。

11、みどりの食料システム戦略
農林水産省は、2021年5月12日「みどりの食料システム戦略」を策定しました。「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに目指す姿として、
1.農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現
2.化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減
3.化学肥料の使用量を30%低減
4.耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万haに拡大
5.2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現
6.エリートツリー等を林業用苗木の9割以上に拡大
7.ニホンウナギ、クロマグロ等の養殖において人工種苗比率100%を実現
等の目標を掲げています。

12、ネオニコ含む化学農薬の使用量50%減
「みどりの食料システム戦略」には、「ネオニコチノイド系農薬を含む従来の殺虫剤を使用しなくてもすむような新規農薬等の開発により、化学農薬使用量(リスク換算)の削減を目指す」と書かれています。また、「化学農薬のみに依存しない総合的な病害虫管理体系の確立・普及等を図る」ために、天敵の活用や、水田の水管理による雑草の抑制に言及しています。ネオニコチノイド系農薬の使用が減り、生態系を保全する農法が広がると嬉しいです。

13、化学肥料の使用量30%減
「みどりの食料システム戦略」には、「輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量の削減を目指す」と書かれ、有機農業の推進や、土壌微生物の機能解明と有効活用技術の開発が謳われています。一方で、RNA農薬の開発や、画期的に肥料効率の良いスーパー品種の育種を遺伝子組み換え技術を使って行うとも書かれ、そのような生態系循環と相いれない技術には注意が必要です。

14、有機農業の取組面積を25%に
「みどりの食料システム戦略」には、耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%(100万ha)に拡大と書かれています。有機農業の取り組み面積は2018年で0.5%(2万3700ha)、これをあと30年で50倍にするという計画です。ちなみに2009年は0.4%(1万6300ha)でしたので、この10年での増加は1.25倍。30年で50倍はかなり高い目標です。次の世代が子どもを育てる時代には、国産オーガニックが当たり前の時代になっていたらいいな。

15、食品ロス
日本の食品廃棄物は年間2,531万トン。その中で、本来食べられるのに捨てられる食品「食品ロス」の量は年間600万トンに上ります。これは国民全員が、毎日毎日お茶碗1杯のごはんを捨てていることに相当します。コープ自然派は店舗を持たず、注文のあった分だけ生産、販売することで食品ロスの量はかなり低く抑えられています。また、畑でのロスが少なくなるよう「Oh!susowake」などに取り組んでいます。

16、non-GMO
日本は、遺伝子組み換え(GM)作物の商業栽培が行われていないにも関わらず、世界で最もGM作物を消費している国のひとつです。食糧自給率の低さゆえに、飼料、食品添加物、植物油脂の原料として多くのGM作物が輸入されているからです。また、国内初のゲノム編集食品GABAトマトが流通しようとしています。ゲノム編集は遺伝子組み換え技術のひとつですが、安全性の審査や表示のルールが違い、私たちが知らないうちに口にしてしまう可能性が高くなっています。コープ自然派は遺伝子組み換えやゲノム編集食品に反対しています。

17、LCA ライフサイクルアセスメント
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、製品やサービスのライフサイクル全体の環境負荷を考えることです。資源採取、原料生産、製品生産、流通、消費、廃棄、リサイクル・・・その商品ができるまでの過去、そして使ったあとの未来まで含めて考えます。食べ物に関しても、例えば牛乳であれば、牛の飼い方はアニマルウェルフェアに適っているか、飼料は何を与えているか、糞尿はどう処理しているか、しぼった乳の加工方法、輸送にかかるエネルギー、パッケージはリユースやリサイクルできるのか、などなど・・・生産から流通、消費、食品ロスまで幅広く食について考え、選ぶ力をつけたいですね。

18、種子法
食べもののおおもとは「たね」。たねがなければ実りはありません。特に、主食となる米、麦、大豆といった主要作物については、戦後「二度と国民を飢えさせない」ために「主要農作物種子法」という法律ができていました。米、麦、大豆の優良な種子を都道府県の責任で安定的に生産・供給しなさいという法律でしたが、2018年に廃止されてしまいました。たねを守るために、現在26道県で独自の種子条例が制定されていますが、奈良県にはありません。コープ自然派奈良では、奈良県にも種子条例を!と署名活動を行っています。

19、有機農業講座
たねの次に大事なのは、環境です。地球規模の温室効果ガスの排出量は林業を含む農業分野で全体の1/4を占めると言われ、農薬や化学肥料で土や水を汚すことで生物多様性が損なわれています。有機農業は環境負荷の低い農業です。コープ自然派奈良では、有機農業に取り組む農家を増やしたいと、栽培技術講座を開催します。ぜひたくさんの農家や、これから農業をしてみたい方に参加してもらえたらうれしいです。
BLOF理論栽培技術実践型講座 「有機栽培を学ぶ」
https://www.nara.shizenha.net/event/2249/

20、学校給食
コープ自然派奈良では、学校給食の取り組みを行っています。2012年に奈良県農民連と一緒に設立した「奈良の学校給食を考える会」のコンセプトは「おいしい給食&ほんとうの食育」。現在は大和郡山市、橿原市、奈良市に活動が広がり、地産率UP、オーガニック率UPを目指しています。給食はこどもたちの年間食事回数の1/6。子どもたちへの食育、地域でお金が回る経済、笑顔と環境が守られる関係…学校給食を中心に実現したいことがたくさんあります。
https://www.nara.shizenha.net/1824-2/

21、大和ひみこ米
主食であるお米づくりを、一部でも自分たちの手で体験することの大切さ。大和ひみこ米の田んぼ体験を通して知ったことです。今年は特に、田植え、生き物探し、稲刈りまで、同じ田んぼで体験させてもらえることになりそうです。自分が植えた稲がどのように育ち、一杯のごはんになるのか。ぜひ多くの子どもたちに体験してほしいなと思います。コープ自然派奈良と南桧垣営農組合が一緒につくり、続けてきた「大和ひみこ米」も13年目。イベントへの参加も、買って食べて応援も、お待ちしています。
https://www.nara.shizenha.net/himiko/

22、コープ自然派の考える食育についての理念
2005年「食育基本法」ができたとき、コープ自然派の考える食育についての理念を決めました。「食」と「農」と「環境」は一体であること、多様性のある生態系のなかで「食」=「いのち」が育まれることを実践する取り組みを通して循環型地域社会をめざします。私たちの食べものが、どこでどのように作られ、運ばれてきたのかを知り、日本の農業を守り、食糧自給率向上をめざして一緒に食育を進めます。生協で、組合員が一緒に食育に取り組めたらと思っています。