1-2農業者が減っている

伊川 皆さんのお手元に「奈良県の食と農の概要」という冊子がございまして、見てみるとネガティブな気持ちになっちゃうものですが。でもこれはひとつの情報です。情報、データと、実際のリアルの現場って、必ずしも一致しないこともある。ということで、まずは現場サイドで、山口さん、野村さんが「農業者が減ってきてるな」とかですね、「もうちょっと増やさないとまずいんちゃうかな」とか、「いや、そこそこ増えてきてるよ」っていう、リアル感をお伺いしたくて。山口さんの方から、現状いかがですか。

山口 はい。農業者は減ってるなって、すごい肌に感じるというのが率直なところです。先ほど申し上げましたけども、山口農園をやることになったのは担い手がいないっていう理由ですから。

伊川 ありがとうございます。野村さんいかがですか。

野村 山添村も本当に減っているのは実感しています。後継者不足ですよね。高齢化で、今畑仕事をしている年代は僕より上ばかりです。いま私66歳なんですけど、私のちょっと下ぐらいまでは農業やってます。つまり家が兼業農家で田んぼが何枚かあった、お茶畑も何枚かあったっていうのを引き継いでやってるんですけども、じゃあ私の息子たちがやってるかっていうと誰もやってくれません。たまに手伝いはしてくれますがね。ですからもう減ってることは確かやし、村自体に本当に荒廃地が増えています。田んぼよりもまずは茶畑ですね。以前は茶畑っていうのは各家々でお茶を作ってはったんです。家で揉んでそれを売ってたんですけど、もう個人の家の茶業は全くなくなりました。今山添村で頑張ってやってくれてはるのは、大きな会社です。しかも海外と貿易してはるような会社とかが頑張ってくれてはって、でもそれも後継者不足に悩んでいる実態があって。山添村には工場もありますので、その工場の人たちとお茶畑をする人たちが、何かシェアで期間ごとに一緒に働けへんかなっていうことを、商工会と連携組んでやっていけたらと考えているところです。

伊川 ありがとうございます。現場のリアルな声としてもやっぱり減ってきていると。それは人もそうやけど、周りの農地を見てそれを感じるっていうお話をいただきました。冒頭、自己紹介のときも山口さんがおっしゃっていましたが、山口農園の畑は元々田んぼだったってことですよね。

山口 そうです、ほぼほぼ田んぼばっかりですね。

伊川 その田んぼを畑としても活用していく。それはやっぱり残していくための手法として、しかも、いろんな作物を作りたくなるのを、あえて葉物でっていう決断をされて。

山口 田んぼなのでお米をするのが一番いいんですけど、やっぱり今でこそお米の雲行きが変わってきましたけど、やっぱりお米っていうのはなかなか農業的に合わないって言われてますし。畑は水が溜まってはいけないので、水が溜まる田んぼを排水して畑をやるっていうのは非常に難しいんですけど、それでもやらないと、荒れ果ててしまうと、復旧するのにその荒れ果てた期間×何倍もかかりますから。いかに耕作放棄地にしないかっていうのが大事だと思いますね。

伊川 ありがとうございます。やはり風景というか、農業者が辞めていかれるのを何とかしたいっていう地域への思いから山口農園が立ち上がったっていう話を、改めて伺えて良かったです。

野村さんがおっしゃったように、山添村の風景って、田んぼがあって、古民家があって竹藪があってそして茶畑があって、というような本当に日本昔話のような風景なんですけど、それを支えている茶園が、私が仕事をしてからの25年でも次々と音を立てて辞めていかれました。我々も全ては受け止められなかったんですけど、その一部をお借りしてやらせていただいてるっていう立場です。野村さんが山添村に戻ってきてからの10年ほど、風景の変化っていうのは結構顕著でしたか。

野村 少なくとも若い頃は、道路沿いっていうのは綺麗に保たれていました。山添村って綺麗やなっていうのがあったんですけど、結局それがどんどん荒廃してるってことで。やっぱりちょっと山に入ると、茶畑がもうほっとき(ほっといたまま)なので、激しく森に変わっていくっていう状況にあります。それを何とかしたいっていうことで、個人的には茶の実オイルっていう、茶の実を使ったオイルを作っていこうという取り組みをされている方々もおられますし、伊川さんがやってる三年番茶も活かしながら、これから山添村のものを増やしていけたらなと思っています。

伊川 ありがとうございます。そういった意味では、ここに集まらせていただいてる我々っていうのは、人口も減っていくし土地は放棄地になるしという中で、それぞれができる立場でやれることをやってきて今日ここにお呼びいただいてるのかなと思うんですけども。そういった中でも、やはり農業者を増やしていくには、学びと持続性という2つが非常に大事かなと思っています。そういったところで、山口農園さんが取り組まれてきた「オーガニックアグリスクールなら」のお話をいただくことできますでしょうか。