1-1自己紹介

山口 みなさんおはようございます。有限会社山口農園の代表の山口です。今日はよろしくお願いいたします。

山口農園は、ハウスで野菜を作っています。もともと会社を立ち上げたのが2005年の3月で、ちょうど丸20年になります。よく潰れなかったなと思います(笑)

よく、オーガニックをやりたいといって会社や農業を始められる方が多いと思うんですけど、うちの場合は、当時過疎化で地域から人がどんどんいなくなっていて、このままではこの地域が終わってしまうと妻のお父さんから相談を受けまして。僕はサラリーマンだったんですけども、2005年32歳で会社を一緒に立ち上げるというところがスタートになりました。

作ってる野菜は葉物野菜です。ほうれん草、水菜、小松菜とか10種類ぐらいを周年で作っています。元々は80種類ぐらい作ってたんですけど、葉物野菜に絞りました。年間1作しかできないものだと失敗すると収量ゼロですけど、葉物野菜は大体1ヶ月ぐらいでできますから、1回失敗しても種を撒きなおせば年間4~5回チャンスがあるということで、葉物野菜に絞ってます。

うちの特徴として、100%有機JASでやってます。全国的にも100%有機JASでやってる法人はあんまりないと思うんですね。今日は担い手というテーマですけれども、僕も元々農家でも何でもなくて、大和郡山市で生まれ育ち、普通にサラリーマンをして、農業とは全く無関係でした。農業をするにあたって、正直しんどい仕事というイメージがありましたので、若い人でも一緒に農業やりたいと思うような農業を目指しています。

農業にはいろんな農業があると思うんです。有機農業だけでなくて、慣行農業も自然農業もあると思うんですけど、僕はどれも正解だと思ってまして、有機農業が絶対正解だと実は思ってません。正解っていうのは、自分自身とか周りとか家族とかが、幸せかどうかというところが一番大事かなと思ってます。

最初は家族経営で始まりましたが、会社組織にして、今56名の方が頑張っていただいていて、面積で10ヘクタール、ハウス171棟で野菜をつくっています。うちの特徴は、生産とか収穫とかそういった部署を7つに分けまして、一般的な会社と同じような形でやっています。

元々うちの場所は、田んぼ80枚ぐらいの場所を3枚ぐらいの大きい農地にしてスタートしました。中山間と言われる場所では、3畝4畝くらいの細かい土地を集積して、やりやすい土地にすることも大事かなと思っています。依頼を受けてもやりにくいなと思ったら、そのお隣の土地をちょっと貸してくださいということで交渉しながら、土地を広げていってるような感じです。

東京の方に出荷させていただくことも多いんですけども、奈良でもうちの野菜を使ってくれているお店もありますので、ぜひ皆さん足を運んでください。以上です。ありがとうございました。

伊川 山口さんありがとうございました。続きまして野村さんの方から山添村のお話も含めてご紹介よろしくお願いします。

野村 改めまして皆さんこんにちは。山添村村長をしています野村といいます。どうぞよろしくお願いします。

こういう会があったら必ず聞くんですけど、皆さん山添村ってご存知ですか。この職についたのは3年半前なんですけど、奈良市であったある集まりで「山添村の野村です」って言ったら「山添村って何県ですか」って言われまして。そのショックから、まずは僕の仕事は山添村を世間に知ってもらうことだと、いろんな場所に出かけていっては名刺を配っています。ほとんどの方が山添村って言われると「奈良の南の方ですか」って言われるんですけど、山添村っていうのは、西は奈良市、東は三重県の伊賀市に接する奈良県の北東部です。そんな中で私は育ち、そこの村長をさせてもらっています。村ができたときは人口6000人いたんですけど、今はもう3000人という、どこの村でも同じですが人口減少、高齢化社会、少子高齢化っていう、そういう状況にある村です。

山添村は、山間なんですけども、都会に近いということをひとつの売りにしています。名阪国道を使えば大阪まで1時間、名古屋まで1時間30分、奈良市までは50分、隣の名張市や伊賀市まででは15分とか20分で行ける。15分走ればコンビニもあるという、山でありながら、ある面便利な村なんです。そういった意味で山添村の村民さんはあんまり人口減少とかに危機感を持ってなくて。私は、そういう危機感を持って山添村をもう一回復興していきたいなという思いで、この職についた次第です。

自分自身は、実は稲作を一町の田んぼと、それからお茶を3反作っています。お茶は自然農法といって、無農薬無肥料で作っています。それからお米は特別栽培米といって、一発目にちょっと農薬を撒くですけど、それ以外は撒かないというお米を作っています。「村長しながらそんなんできるんか」ってよく言われるんですけども、朝方もう4時ぐらいから明るいので、4時から2時間ぐらい作業して、それから役場に行って仕事をするっていう、そういう生活です。

元々は奈良市で小学校の教員をしていました。37年間教員をして、退職してから役場に勤めて、そこから村長になりました。実は山添村は昨日、オーガニックビレッジ宣言をさせていただきました。オーガニックビレッジ宣言は皆さんご存知だと思いますが、奈良では宇陀市さんが一発目で、その次に天理市さんが昨年されました。その3番目ということで。天理市の福住で伊川さんが指導されてオーガニックビレッジをされてますけども、山添村も伊川さんの指導を仰いで、オーガニックビレッジスクールというのを去年から開校して1年間取り組んでいます。実際に分校の高校生と、一般の社会人の方々が一緒にやっているっていう状況ですね。皆さんぜひとも参加していただけたらなと思っています。

そして山添村は、どこでも村はやってるんですけど、農地バンクっていう制度に取り組んでいます。これもただ貸し借りするだけではなくて、貸す方の機械とかノウハウとかを、借りる人に教えてくれるようなシステムにして、就農する人がこれからも増えていく、就農してからも農業をやりやすいっていう体制を作ろうとしています。

それからもう一つは「子育て世代を応援する山添村」ということで、20歳まで医療費無料です。それから給食費無料、保育料無料ということで、若者世代がどんどんと村に移住してもらえるようなシステムをとっています。以上です。今後ともよろしくお願いします。

伊川 野村さんありがとうございます。ご自身が半農半村長ということで、全国にこれが広がればいいなと思いました。そうしましたら、本日は私がファシリテーションをやるんですけども、その前に自己紹介ということで、お話させていただきます。

伊川 健一自然農園という農園を25年させていただいてまして、山添村を中心として、ちょうど10町歩あります。もうひとつ、一昨年「一般社団法人みんなとふるさと」を立ち上げて、大和高原という素晴らしい場所を持続可能な里山エリアのひな形にできたらなということで、天理市と山添村のオーガニックビレッジ宣言の伴走支援をさせていただいております。

今日は「農業者を増やすには」というテーマなんですけど、そもそも農業って作物を作って販売する以外に社会に様々な影響を与えてると思ってまして、ちょっとその紹介をします。まずは国土の景観であったり、ふるさとの風景を守っているのが農業の役割だと思います。これ非常に大きいですね。それから、もの作りということで、オーガニックコスメを奈良県の会社とコラボレーションで作りました。やはり地産地消で直接原料として届けられるのも農家の力だと思っています。日本のもの作りってやっぱりまだまだ世界で素晴らしいので、新鮮で安全なお野菜を組み合わせることで、今後は例えば安心できるお薬なんかも農業の力で生み出していけるんじゃないかなと思います。

それから教育ですね。僕、中学生までは学校の先生になりたいっていう夢がありまして、今毎週1回どこかの学校にいて夢が叶ったような状況です。公立学校で様々な取り組みをしてるんですけども、本当に子どもたちの感性って瑞々しいので、五感を通じた感性の教育をするっていうのも農家の役割じゃないかなと思います。

それから環境ですね。有機を広げていくことは直接的に環境を良くしていきます。我々が作ってるお茶では二酸化炭素を90%以上削減できるというデータが出ています。そういう環境への影響もやっぱり有機農業の素晴らしさのひとつです。

それから観光ですね。「来てお茶を摘んで終わり」じゃなくて、我々は摘んだお茶を最終の商品にするまでみんなで作るというワークショップをやっています。

それから医療ですね。お野菜もそうですが、お茶を飲むとどんなふうに健康に効果があるかっていうエビデンスを取っていくことも、農業、オーガニックの大きな役割です。

それから最後に日本文化ですね。やはり全ての水と食べ物それからお茶もそうですね、そういうものがなければ、日本の文化は継承していけないので、農業は日本文化の下支えにもなっています。

今までいろいろな取り組みをしてくる中で、様々な領域の先生方と出会ってきました。その中で、これから農業の裾野を広げていくのはやっぱり学びかなと思いまして、ここまで2年間ぐらい「福住村塾(ふくすみそんじゅく)」という学びの場をやらせていただきました。オーガニックの学び、今日午後からお話いただくオオニシ恭子先生とか、ハーブの専門家の先生とか、立命館の先生とかに来ていただくんですけど、今日集まっていらっしゃるような奈良県屈指の、食の安全意識の高い方々に向けてやるんではなくて、村に住んでる方々向けにやったんですね。要するにオーガニックを広げていくには、興味あるないじゃなくって、地域がテーマになっていくので。

みんな学ぶことには興味あるんですね。新しいことを知りたい。僕が感動したのは、88歳のおじいちゃんとおばあちゃんが「車乗られへんから歩いてきました」っていって福住村塾に来られて。「私らこの歳になっても学びたいから、こういう場を作ってくれてありがとう」って言うてくれはって。本当に感動しました。

のちほどちょっとオーガニックスクールのお話もさせていただこうと思っていますが、宇陀市、天理市、山添村が奈良県内のオーガニックビレッジ宣言の長男、次男、三男だと勝手に思ってるんですが、その次男が面白いことをやり始めます。お米のオーガニックスクール開校です。

あとちょっとお伝えできたらなと思ったのが、子どもたちですね。学校給食をオーガニック、地産地消にすることと同時に、授業を学校の中に入れていくことが絶対に大事。僕が日本で一番進んでると思った今治市の学校給食では、授業の中に入れてるんですね。なので、子どもたちが家に帰ったら、直売所の野菜も米も全部なくなります。それを僕は今治市で15年前に見てきました。やっぱりあの形は、我々が目指すひとつのモデルじゃないかなというふうに思います。要するに、食育や学校給食が社会自体を変えている様が、もう既に15年前にあったんですね。なので、しっかりと成功事例をトレースして奈良に持っていくっていうことができると、皆さんが作ってきた下地が生きてくるかなと。

今日はそんな一歩を踏み出せるこの力強い三方のお話をお楽しみください。ということで、自己紹介はここまでで、今日テーマとしていただいているのは、いかになる農業者を増やすかということなんですけども。